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条約法に関するウィーン条約 Vienna Convention on the Law of Treaties (1980)

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1980(昭和55)年、オーストリア(エステル-ライヒ)の首都ウィーンで合意された国際条約。「条約」(treaty)とは、国家間の合意によって生ずる法的拘束力を持つ約束で、協約・協定・規約(共に agreement)・憲章(charter)・規定(rule)・取り極め(取り決め arrangement)・議定書(protocol)・宣言(declaration)・覚書(note)をも含め、一般的に文書として明文化される。『条約法に関するウィーン条約』は、言わば、その「条約」そのものを定義する為に作られた「条約の為の条約」と言える。


条約法に関するウィーン条約(抄)


法令番号 :昭和56年7月20日条約第16号
施行年月日:昭和56(1981)年8月1日外務省告示第282号


 この条約の当事国は、国際関係の歴史における条約の基本的な役割を考慮し、条約が、国際法の法源として、また、国(憲法体制及び社会体制のいかんを問わない。)の間の平和的協力を発展させるための手段として、引き続き重要性を増しつつあることを認め、自由意思による同意の原則及び信義誠実の原則並びに「合意は守られなければならない」との規則が普遍的に認められていることに留意し、条約に係る紛争が、他の国際紛争の場合におけると同様に、平和的手段により、かつ、正義の原則及び国際法の諸原則に従つて解決されなければならないことを確認し、国際連合加盟国の国民が、正義と条約から生ずる義務の尊重とを維持するために必要な条件の確立を決意したことを想起し、人民の同権及び自決の原則、すべての国の主権平等及び独立の原則、国内問題への不干渉の原則、武力による威嚇又は武力の行使の禁止の原則、すべての者の人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守の原則等国際連合憲章に規定する国際法の諸原則を考慮し、この条約において条約法の法典化及び漸進的発達が図られたことにより、国際連合憲章に定める国際連合の目的、すなわち、国際の平和及び安全の維持、諸国間の友好関係の発展並びに国際協力の達成が推進されることを確信し、この条約により規律されない問題については、引き続き国際慣習法の諸規則により規律されることを確認して、次のとおり協定した。

 第一部 序

第一条(この条約の適用範囲)

 この条約は、国の間の条約について適用する。

第二条(用語)

1 この条約の適用上、

 (a)「条約」とは、国の間において文書の形式により締結され、国際法によつて規律される国際的な合意(単一の文書によるものであるか関連する二以上の文書によるものであるかを問わず、また、名称のいかんを問わない。)をいう。

 (b)「批准」、「受諾」、「承認」及び「加入」とは、それぞれ、そのように呼ばれる国際的な行為をいい、条約に拘束されることについての国の同意は、これらの行為により国際的に確定的なものとされる。

 (c)「全権委任状」とは、国の権限のある当局の発給する文書であつて、条約文の交渉、採択若しくは確定を行うため、条約に拘束されることについての国の同意を表明するため又は条約に関するその他の行為を遂行するために国を代表する一又は二以上の者を指名しているものをいう。

 (d)「留保」とは、国が、条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果を排除し又は変更することを意図して、条約への署名、条約の批准、受諾若しくは承認又は条約への加入の際に単独に行う声明(用いられる文言及び名称のいかんを問わない。)をいう。

 (e)「交渉国」とは、条約文の作成及び採択に参加した国をいう。

 (f)「締約国」とは、条約(効力を生じているかいないかを問わない。)に拘束されることに同意した国をいう。

 (g)「当事国」とは、条約に拘束されることに同意し、かつ、自国について条約の効力が生じている国をいう。

 (h)「第三国」とは、条約の当事国でない国をいう。

 (i)「国際機関」とは、政府間機関をいう。

2 この条約における用語につき規定する1の規定は、いずれの国の国内法におけるこれらの用語の用法及び意味にも影響を及ぼすものではない。

第三条(この条約の適用範囲外の国際的な合意)

 この条約が国と国以外の国際法上の主体との間において又は国以外の国際法上の主体の間において締結される国際的な合意及び文書の形式によらない国際的な合意については適用されないということは、次の事項に影響を及ぼすものではない。

 (a)これらの合意の法的効力

 (b)この条約に規定されている規則のうちこの条約との関係を離れ国際法に基づきこれらの合意を規律するような規則のこれらの合意についての適用

 (c)国及び国以外の国際法上の主体が当事者となつている国際的な合意により規律されている国の間の関係へのこの条約の適用

第四条・第五条 (省略)

 第二部 条約の締結及び効力発生

   第一節 条約の締結

第六条(国の条約締結能力)

 いずれの国も、条約を締結する能力を有する。

第七条(全権委任状)

1 いずれの者も、次の場合には、条約文の採択若しくは確定又は条約に拘束されることについての国の同意の表明の目的のために国を代表するものと認められる。

 (a)当該者から適切な全権委任状の提示がある場合

 (b)当該者につきこの1に規定する目的のために国を代表するものと認めかつ全権委任状の提示を要求しないことを関係国が意図していたことが関係国の慣行又はその他の状況から明らかである場合

2 次の者は、職務の性質により、全権委任状の提示を要求されることなく、自国を代表するものと認められる。

 (a)条約の締結に関するあらゆる行為について、元首、政府の長及び外務大臣

 (b)派遣国と接受国との間の条約の条約文の採択については、外交使節団の長

 (c)国際会議又は国際機関若しくはその内部機関における条約文の採択については、当該国際会議又は国際機関若しくはその内部機関に対し国の派遣した代表者

第八条(権限が与えられることなく行われた行為の追認)

 条約の締結に関する行為について国を代表する権限を有するとは前条の規定により認められない者の行つたこれらの行為は、当該国の追認がない限り、法的効果を伴わない。

第九条(条約文の採択)

1 条約文は、2の場合を除くほか、その作成に参加したすべての国の同意により採択される。

2 国際会議においては、条約文は、出席しかつ投票する国の三分の二以上の多数による議決で採択される。ただし、出席しかつ投票する国が三分の二以上の多数による議決で異なる規則を適用することを決定した場合は、この限りでない。

第十条(条約文の確定)

 条約文は、次のいずれかの方法により真正かつ最終的なものとされる。

 (a)条約文に定められている手続又は条約文の作成に参加した国が合意する手続

 (b)(a)の手続がない場合には、条約文の作成に参加した国の代表者による条約文又は条約文を含む会議の最終議定書への署名、追認を要する署名又は仮署名

第十一条(条約に拘束されることについての同意の表明の方法)

 条約に拘束されることについての国の同意は、署名、条約を構成する文書の交換、批准、受諾、承認若しくは加入により又は合意がある場合には他の方法により表明することができる。

第十二条(条約に拘束されることについての同意の署名による表明)

1 条約に拘束されることについての国の同意は、次の場合には、国の代表者の署名により表明される。

 (a)署名が同意の表明の効果を有することを条約が定めている場合

 (b)署名が同意の表明の効果を有することを交渉国が合意したことが他の方法により認められる場合

 (c)署名に同意の表明の効果を付与することを国が意図していることが当該国の代表者の全権委任状から明らかであるか又は交渉の過程において表明されたかのいずれかの場合

2 1の規定の適用上、

 (a)条約文への仮署名は、交渉国の合意があると認められる場合には、条約への署名とされる。

 (b)国の代表者による条約への追認を要する署名は、当該国が追認をする場合には、条約への完全な署名とされる。

第十三条(条約に拘束されることについての同意の条約構成文書の交換による表明)

 国の間で交換される文書により構成されている条約に拘束されることについての国の同意は、次の場合には、当該文書の交換により表明される。

 (a)文書の交換が同意の表明の効果を有することを当該文書が定めている場合

 (b)文書の交換が同意の表明の効果を有することを国の間で合意したことが他の方法により認められる場合

第十四条(条約に拘束されることについての同意の批准、受諾又は承認による表明)

1 条約に拘束されることについての国の同意は、次の場合には、批准により表明される。

 (a)同意が批准により表明されることを条約が定めている場合

 (b)批准を要することを交渉国が合意したことが他の方法により認められる場合

 (c)国の代表者が批准を条件として条約に署名した場合

 (d)批准を条件として条約に署名することを国が意図していることが当該国の代表者の全権委任状から明らかであるか又は交渉の過程において表明されたかのいずれかの場合

2 条約に拘束されることについての国の同意は、批准により表明される場合の条件と同様の条件で、受諾又は承認により表明される。

第十五条 (省略)

第十六条(批准書、受諾書、承認書又は加入書の交換又は寄託)

 条約に別段の定めがない限り、批准書、受諾書、承認書又は加入書は、これらについて次のいずれかの行為が行われた時に、条約に拘束されることについての国の同意を確定的なものとする。

 (a)締約国の間における交換

 (b)寄託者への寄託

 (c)合意がある場合には、締約国又は寄託者に対する通告

第十七条 (省略)

第十八条(条約の効力発生前に条約の趣旨及び目的を失わせてはならない義務)

 いずれの国も、次の場合には、それぞれに定める期間、条約の趣旨及び目的を失わせることとなるような行為を行わないようにする義務がある。

 (a)批准、受諾若しくは承認を条件として条約に署名し又は条約を構成する文書を交換した場合には、その署名又は交換の時から条約の当事国とならない意図を明らかにする時までの間

 (b)条約に拘束されることについての同意を表明した場合には、その表明の時から条約が効力を生ずる時までの間。ただし、効力発生が不当に遅延する場合は、この限りでない。

   第二節 留保

第十九条(留保の表明)

 いずれの国も、次の場合を除くほか、条約への署名、条約の批准、受諾若しくは承認又は条約への加入に際し、留保を付することができる。

 (a)条約が当該留保を付することを禁止している場合

 (b)条約が、当該留保を含まない特定の留保のみを付することができる旨を定めている場合

 (c)(a)及び(b)の場合以外の場合において、当該留保が条約の趣旨及び目的と両立しないものであるとき。

第二十条(留保の受諾及び留保に対する異議)

1 条約が明示的に認めている留保については、条約に別段の定めがない限り、他の締約国による受諾を要しない。

2 すべての当事国の間で条約を全体として適用することが条約に拘束されることについての各当事国の同意の不可欠の条件であることが、交渉国数が限定されていること並びに条約の趣旨及び目的から明らかである場合には、留保については、すべての当事国による受諾を要する。

3 条約が国際機関の設立文書である場合には、留保については、条約に別段の定めがない限り、当該国際機関の権限のある内部機関による受諾を要する。

4 1から3までの場合以外の場合には、条約に別段の定めがない限り、

 (a)留保を付した国は、留保を受諾する他の締約国との間においては、条約がこれらの国の双方について効力を生じているときはその受諾の時に、条約がこれらの国の双方又は一方について効力を生じていないときは双方について効力を生ずる時に、条約の当事国関係に入る。

 (b)留保に対し他の締約国が異議を申し立てることにより、留保を付した国と当該他の締約国との間における条約の効力発生が妨げられることはない。ただし、当該他の締約国が別段の意図を明確に表明する場合は、この限りでない。

 (c)条約に拘束されることについての国の同意を表明する行為で留保を伴うものは、他の締約国の少なくとも一が留保を受諾した時に有効となる。

5 2及び4の規定の適用上、条約に別段の定めがない限り、いずれかの国が、留保の通告を受けた後十二箇月の期間が満了する日又は条約に拘束されることについての同意を表明する日のいずれか遅い日までに、留保に対し異議を申し立てなかつた場合には、留保は、当該国により受諾されたものとみなす。

第二十一条(留保及び留保に対する異議の法的効果)

1 第十九条、前条及び第二十三条の規定により他の当事国との関係において成立した留保は、

 (a)留保を付した国に関しては、当該他の当事国との関係において、留保に係る条約の規定を留保の限度において変更する。

 (b)当該他の当事国に関しては、留保を付した国との関係において、留保に係る条約の規定を留保の限度において変更する。

2 1に規定する留保は、留保を付した国以外の条約の当事国相互の間においては、条約の規定を変更しない。

3 留保に対し異議を申し立てた国が自国と留保を付した国との間において条約が効力を生ずることに反対しなかつた場合には、留保に係る規定は、これらの二の国の間において、留保の限度において適用がない。

第二十二条・第二十三条 (省略)

   第三節 条約の効力発生及び暫定的適用

第二十四条・第二十五条 (省略)

 第三部 条約の遵守、適用及び解釈

   第一節 条約の遵守

第二十六条(「合意は守られなければならない」)

 効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない。

第二十七条(国内法と条約の遵守)

 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。この規則は、第四十六条の規定の適用を妨げるものではない。

   第二節 条約の適用

第二十八条(条約の不遡及)

 条約は、別段の意図が条約自体から明らかである場合及びこの意図が他の方法によつて確認される場合を除くほか、条約の効力が当事国について生ずる日前に行われた行為、同日前に生じた事実又は同日前に消滅した事態に関し、当該当事国を拘束しない。

第二十九条 (省略)

第三十条(同一の事項に関する相前後する条約の適用)

1 国際連合憲章第百三条の規定が適用されることを条件として、同一の事項に関する相前後する条約の当事国の権利及び義務は、2から5までの規定により決定する。

2 条約が前の若しくは後の条約に従うものであること又は前の若しくは後の条約と両立しないものとみなしてはならないことを規定している場合には、当該前の又は後の条約が優先する。

3 条約の当事国のすべてが後の条約の当事国となつている場合において、第五十九条の規定による条約の終了又は運用停止がされていないときは、条約は、後の条約と両立する限度においてのみ、適用する。

4 条約の当事国のすべてが後の条約の当事国となつている場合以外の場合には、

 (a)双方の条約の当事国である国の間においては、3の規則と同一の規則を適用する。

 (b)双方の条約の当事国である国といずれかの条約のみの当事国である国との間においては、これらの国が共に当事国となつている条約が、これらの国の相互の権利及び義務を規律する。

5 4の規定は、第四十一条の規定の適用を妨げるものではなく、また、第六十条の規定による条約の終了又は運用停止の問題及びいずれかの国が条約により他の国に対し負つている義務に反することとなる規定を有する他の条約を締結し又は適用することから生ずる責任の問題に影響を及ぼすものではない。

   第三節 条約の解釈

第三十一条(解釈に関する一般的な規則)

1 条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする。

2 条約の解釈上、文脈というときは、条約文(前文及び附属書を含む。)のほかに、次のものを含める。

 (a)条約の締結に関連してすべての当事国の間でされた条約の関係合意

 (b)条約の締結に関連して当事国の一又は二以上が作成した文書であつてこれらの当事国以外の当事国が条約の関係文書として認めたもの

3 文脈とともに、次のものを考慮する。

 (a)条約の解釈又は適用につき当事国の間で後にされた合意

 (b)条約の適用につき後に生じた慣行であつて、条約の解釈についての当事国の合意を確立するもの

 (c)当事国の間の関係において適用される国際法の関連規則

4 用語は、当事国がこれに特別の意味を与えることを意図していたと認められる場合には、当該特別の意味を有する。

第三十二条・第三十三条 (省略)

   第四節 条約と第三国

第三十四条(第三国に関する一般的な規則)

 条約は、第三国の義務又は権利を当該第三国の同意なしに創設することはない。

第三十五条(第三国の義務について規定している条約)

 いずれの第三国も、条約の当事国が条約のいずれかの規定により当該第三国に義務を課することを意図しており、かつ、当該第三国が書面により当該義務を明示的に受け入れる場合には、当該規定に係る当該義務を負う。

第三十六条(第三国の権利について規定している条約)

1 いずれの第三国も、条約の当事国が条約のいずれかの規定により当該第三国若しくは当該第三国の属する国の集団に対し又はいずれの国に対しても権利を与えることを意図しており、かつ、当該第三国が同意する場合には、当該規定に係る当該権利を取得する。同意しない旨の意思表示がない限り、第三国の同意は、存在するものと推定される。ただし、条約に別段の定めがある場合は、この限りでない。

2 1の規定により権利を行使する国は、当該権利の行使につき、条約に定められている条件又は条約に合致するものとして設定される条件を遵守する。

第三十七条 (省略)

第三十八条(国際慣習となることにより第三国を拘束することとなる条約の規則)

 第三十四条から前条までの規定のいずれも、条約に規定されている規則が国際法の慣習的規則と認められるものとして第三国を拘束することとなることを妨げるものではない。

 第四部 条約の改正及び修正

第三十九条から第四十一条まで (省略)

 第五部 条約の無効、終了及び運用停止

   第一節 総則

第四十二条(条約の有効性及び条約の効力の存続)

1 条約の有効性及び条約に拘束されることについての国の同意の有効性は、この条約の適用によつてのみ否認することができる。

2 条約の終了若しくは廃棄又は条約からの当事国の脱退は、条約又はこの条約の適用によつてのみ行うことができる。条約の運用停止についても、同様とする。

第四十三条(条約との関係を離れ国際法に基づいて課される義務)

 この条約又は条約の適用によりもたらされる条約の無効、終了若しくは廃棄、条約からの当事国の脱退又は条約の運用停止は、条約に規定されている義務のうち条約との関係を離れても国際法に基づいて課されるような義務についての国の履行の責務に何ら影響を及ぼすものではない。

第四十四条・第四十五条 (省略)

   第二節 条約の無効

第四十六条(条約を締結する権能に関する国内法の規定)

1 いずれの国も、条約に拘束されることについての同意が条約を締結する権能に関する国内法の規定に違反して表明されたという事実を、当該同意を無効にする根拠として援用することができない。ただし、違反が明白でありかつ基本的な重要性を有する国内法の規則に係るものである場合は、この限りでない。

2 違反は、条約の締結に関し通常の慣行に従いかつ誠実に行動するいずれの国にとつても客観的に明らかであるような場合には、明白であるとされる。

第四十七条(国の同意を表明する権限に対する特別の制限)

 特定の条約に拘束されることについての国の同意を表明する代表者の権限が特別の制限を付して与えられている場合に代表者が当該制限に従わなかつたという事実は、当該制限が代表者による同意の表明に先立つて他の交渉国に通告されていない限り、代表者によつて表明された同意を無効にする根拠として援用することができない。

第四十八条(錯誤)

1 いずれの国も、条約についての錯誤が、条約の締結の時に存在すると自国が考えていた事実又は事態であつて条約に拘束されることについての自国の同意の不可欠の基礎を成していた事実又は事態に係る錯誤である場合には、当該錯誤を条約に拘束されることについての自国の同意を無効にする根拠として援用することができる。

2 1の規定は、国が自らの行為を通じて当該錯誤の発生に寄与した場合又は国が何らかの錯誤の発生の可能性を予見することができる状況に置かれていた場合には、適用しない。

3 条約文の字句のみに係る錯誤は、条約の有効性に影響を及ぼすものではない。このような錯誤については、第七十九条の規定を適用する。

第四十九条(詐欺)

 いずれの国も、他の交渉国の詐欺行為によつて条約を締結することとなつた場合には、当該詐欺を条約に拘束されることについての自国の同意を無効にする根拠として援用することができる。

第五十条(国の代表者の買収)

 いずれの国も、条約に拘束されることについての自国の同意が、他の交渉国が直接又は間接に自国の代表者を買収した結果表明されることとなつた場合には、その買収を条約に拘束されることについての自国の同意を無効にする根拠として援用することができる。

第五十一条(国の代表者に対する強制)

 条約に拘束されることについての国の同意の表明は、当該国の代表者に対する行為又は脅迫による強制の結果行われたものである場合には、いかなる法的効果も有しない。

第五十二条(武力による威嚇又は武力の行使による国に対する強制)

 国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する武力による威嚇又は武力の行使の結果締結された条約は、無効である。

第五十三条(一般国際法の強行規範に抵触する条約)

 締結の時に一般国際法の強行規範に抵触する条約は、無効である。この条約の適用上、一般国際法の強行規範とは、いかなる逸脱も許されない規範として、また、後に成立する同一の性質を有する一般国際法の規範によつてのみ変更することのできる規範として、国により構成されている国際社会全体が受け入れ、かつ、認める規範をいう。

   第三節 条約の終了及び運用停止

第五十四条(条約又は当事国の同意に基づく条約の終了又は条約からの脱退)

 条約の終了又は条約からの当事国の脱退は、次のいずれかの場合に行うことができる。

 (a)条約に基づく場合

 (b)すべての当事国の同意がある場合。この場合には、いかなる時点においても行うことができる。もつとも、当事国となつていない締約国は、事前に協議を受ける。

第五十五条から第五十九条まで (省略)

第六十条(条約違反の結果としての条約の終了又は運用停止)

1 二国間の条約につきその一方の当事国による重大な違反があつた場合には、他方の当事国は、当該違反を条約の終了又は条約の全部若しくは一部の運用停止の根拠として援用することができる。

2 多数国間の条約につきその一の当事国による重大な違反があつた場合には、

 (a)他の当事国は、一致して合意することにより、次の関係において、条約の全部若しくは一部の運用を停止し又は条約を終了させることができる。

 (i)他の当事国と違反を行つた国との間の関係

 (ii)すべての当事国の間の関係

 (b)違反により特に影響を受けた当事国は、自国と当該違反を行つた国との間の関係において、当該違反を条約の全部又は一部の運用停止の根拠として援用することができる。

 (c)条約の性質上、一の当事国による重大な違反が条約に基づく義務の履行の継続についてのすべての当事国の立場を根本的に変更するものであるときは、当該違反を行つた国以外の当事国は、当該違反を自国につき条約の全部又は一部の運用を停止する根拠として援用することができる。

3 この条の規定の適用上、重大な条約違反とは、次のものをいう。

 (a)条約の否定であつてこの条約により認められないもの

 (b)条約の趣旨及び目的の実現に不可欠な規定についての違反

4 1から3までの規定は、条約違反があつた場合に適用される当該条約の規定に影響を及ぼすものではない。

5 1から3までの規定は、人道的性格を有する条約に定める身体の保護に関する規定、特にこのような条約により保護される者に対する報復(形式のいかんを問わない。)を禁止する規定については、適用しない。

第六十一条(後発的履行不能)

1 条約の実施に不可欠である対象が永久的に消滅し又は破壊された結果条約が履行不能となつた場合には、当事国は、当該履行不能を条約の終了又は条約からの脱退の根拠として援用することができる。履行不能は、一時的なものである場合には、条約の運用停止の根拠としてのみ援用することができる。

2 当事国は、条約に基づく義務についての自国の違反又は他の当事国に対し負つている他の国際的な義務についての自国の違反の結果条約が履行不能となつた場合には、当該履行不能を条約の終了、条約からの脱退又は条約の運用停止の根拠として援用することができない。

第六十二条(事情の根本的な変化)

1 条約の締結の時に存在していた事情につき生じた根本的な変化が当事国の予見しなかつたものである場合には、次の条件が満たされない限り、当該変化を条約の終了又は条約からの脱退の根拠として援用することができない。

 (a)当該事情の存在が条約に拘束されることについての当事国の同意の不可欠の基礎を成していたこと。

 (b)当該変化が、条約に基づき引き続き履行しなければならない義務の範囲を根本的に変更する効果を有するものであること。

2 事情の根本的な変化は、次の場合には、条約の終了又は条約からの脱退の根拠として援用することができない。

 (a)条約が境界を確定している場合

 (b)事情の根本的な変化が、これを援用する当事国による条約に基づく義務についての違反又は他の当事国に対し負つている他の国際的な義務についての違反の結果生じたものである場合

3 当事国は、1及び2の規定に基づき事情の根本的な変化を条約の終了又は条約からの脱退の根拠として援用することができる場合には、当該変化を条約の運用停止の根拠としても援用することができる。

第六十三条(外交関係又は領事関係の断絶)

 条約の当事国の間の外交関係又は領事関係の断絶は、当事国の間に当該条約に基づき確立されている法的関係に影響を及ぼすものではない。ただし、外交関係又は領事関係の存在が当該条約の適用に不可欠である場合は、この限りでない。

第六十四条(一般国際法の新たな強行規範の成立)

 一般国際法の新たな強行規範が成立した場合には、当該強行規範に抵触する既存の条約は、効力を失い、終了する。

   第四節 手続

第六十五条から第六十八条まで (省略)

   第五節 条約の無効、終了又は運用停止の効果

第六十九条・第七十条 (省略)

第七十一条(一般国際法の強行規範に抵触する条約の無効の効果)

1 条約が第五十三条の規定により無効であるとされた場合には、当事国は、次のことを行う。

 (a)一般国際法の強行規範に抵触する規定に依拠して行つた行為によりもたらされた結果をできる限り除去すること。

 (b)当事国の相互の関係を一般国際法の強行規範に適合したものとすること。

2 第六十四条の規定により効力を失い、終了するとされた条約については、その終了により、

 (a)当事国は、条約を引き続き履行する義務を免除される。

 (b)条約の終了前に条約の実施によつて生じていた当事国の権利、義務及び法的状態は、影響を受けない。ただし、これらの権利、義務及び法的状態は、条約の終了後は、一般国際法の新たな強行規範に抵触しない限度においてのみ維持することができる。

第七十二条 (省略)

 第六部 雑則

第七十三条・第七十四条 (省略)

第七十五条(侵略を行つた国の場合)

 この条約は、侵略を行つた国が、当該侵略に関して国際連合憲章に基づいてとられる措置の結果いずれかの条約に関連して負うことのある義務に影響を及ぼすものではない。

 第七部 寄託者、通告、訂正及び登録

第七十六条から第八十条まで (省略)

 第八部 最終規定

第八十一条から第八十五条まで (省略)

以上の証拠として、下名の全権委員は、それぞれの政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。

1969年5月23日にウィーンで作成した。

  附属書

1 国際連合事務総長は、優秀な法律専門家から成る調停人の名簿を作成し、これを保管する。このため、国際連合のすべての加盟国及びこの条約の当事国は、二人の調停人を指名するよう要請されるものとし、指名された者の氏名が名簿に記載される。調停人の任期は、五年とし、更新することができる。臨時の空席を補充するために指名される調停人の任期についても、同様とする。2の規定によりいずれか特定の任務を遂行するために選定された調停人は、任期の満了後も引き続き当該任務を遂行する。

2 国際連合事務総長は、第六十六条の規定に基づく要請があつた場合には、次のとおり構成される調停委員会に紛争を付託する。紛争の一方の当事者である一又は二以上の国は、次の者を任命する。
(a)紛争の一方の当事者であるいずれかの国の国籍を有する一人の調停人(1に規定する名簿から選定されるか選定されないかを問わない。)
(b)紛争の一方の当事者であるいずれの国の国籍も有しない一人の調停人(1に規定する名簿から選定される。)
紛争の他方の当事者である一又は二以上の国は、同様の方法により二人の調停人を任命する。紛争の双方の当事者の選定に係る四人の調停人の任命は、国際連合事務総長が要請を受領した日の後六十日以内に行われる。四人の調停人は、最後の者が任命された日の後六十日以内に、議長となる五人目の調停人(1に規定する名簿から選定される。)を任命する。議長又は議長以外の調停人の任命が、それぞれの任命について定められた期間内に行われなかつた場合には、国際連合事務総長が当該期間の満了の後六十日以内に任命を行う。国際連合事務総長は、1に規定する名簿に記載された者又は国際法委員会の委員のうちから議長を任命することができる。任命を行うためのいずれの期間も、紛争の当事者の間の合意によつて延長することができる。調停人が欠けたときは、当該調停人の任命の場合と同様の方法によつて空席を補充する。

3 調停委員会は、その手続を決定する。調停委員会は、紛争の当事者の同意を得て、条約の当事国に対しその見解を口頭又は書面により調停委員会に提示するよう要請することができる。調停委員会の決定及び勧告は、五人の調停人の過半数による議決で行う。

4 調停委員会は、紛争の友好的な解決を容易にすると考えられる措置について紛争の当事者の注意を喚起することができる。

5 調停委員会は、紛争の友好的な解決を図るため、紛争の当事者からの意見の聴取、紛争の当事者の主張及び異議の審理並びに紛争の当事者に対する提案を行う。

6 調停委員会は、その設置の日から十二箇月以内に報告を行う。報告は、国際連合事務総長に提出し、かつ、紛争の当事者に送付する。事実又は法律問題に関し報告に記載されている結論を含め、報告は、紛争の当事者を拘束するものではなく、また、紛争の友好的な解決を容易にするために当事者の検討に付される勧告としての性質以外のいかなる性質も有しない。

7 国際連合事務総長は、調停委員会に対しその必要とする援助及び便宜を与える。調停委員会の経費は、国際連合が負担する。

(署名略)


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